この記事を読んでいる方の中には、今まさに辛い状況に直面している方もいるかもしれません。仕事や人間関係、生活の中でどうしても逃げ出したくなることがあるでしょう。
私は長い間、「逃げることは負けだ」という考えを持ち続けてきましたが、実はそうではないことを実感しました。今日はそのことについて、私の経験を交えてお話したいと思います。
逃げることは負けだという固定概念
私の経験は、子供時代に大人たちから教わった教えや、入社当時先輩から教わった教えに基づいています。どんな困難にも立ち向かうこと、乗り越えられる試練だからこそ自分の前に現れるということ、だから逃げたら自分に負けることになる、向き合って戦えと教わってきました。
その信念を心に刻み、15年間同じ会社で働き続けました。どんな辛いことがあっても、逃げずに立ち向かうことで成長できると信じていました。
その結果、同じ会社で長く働き、多くのスキルや知識を身につけることができました。仕事の厳しさやプレッシャーの中で、自己を鍛え上げ、多くの問題を解決する経験を積んできました。
私は、困難を乗り越えることで自分が強くなり、成長できると感じていました。この考え方は、私の職場での評価やキャリアの成功にもつながりました。これらの経験は人生の一部となり、成長の糧となりました。だからこそ、周囲の人にも「逃げてはダメだ」と言い続けてきたのです。
信念に縛られて
そんな中で私は、新たな挑戦として長く働いた会社を辞め、イタリアへの移住を決めました。日本での生活よりも、自分の夢に向かって新しい環境での挑戦を求めたのです。
しかし、スタート地点に立つどころか何をやってもうまくいかず、心が折れそうになる毎日が続きました。言葉の壁に直面し、思った以上にコミュニケーションが取れない。日本とは全く異なる生活システムや諸手続き、家探しもスムーズに進まず、次第に孤独を感じるようになりました。
それでも、「逃げることは負けだ」という信念に囚われ、前に進むしかないと自分に言い聞かせていました。しかし苦痛な毎日が続き、前を向くことはおろか、立ち止まって考える余裕すら持てないほどになり、身動きが取れなくなっていったのです。
それは、以前の私が周囲に「逃げるな」と言い続けてきたからです。そんな自分が逃げて許されるはずがないと感じていました。そして同時に、私の発言が周りを苦しめただろうことも気づき始めました。
なぜなら、相談する相手から「逃げることはいつでもできる、もう少し頑張れ」と言われるたび、心が壊れていくのがわかったからです。
限界に達する瞬間
日本へ逃げ帰ることになったきっかけは、とても些細な事でした。義理父との同居によるちょっとしたいざこざが発端でした。いつもなら一晩眠れば耐えられるのに、なぜかその時は翌日になっても違和感のあるモヤモヤが続いていました。
気分転換に娘を連れて友達と朝カフェに行き、愚痴を聞いてもらいました。やはりこの友達も「日本に帰るのはいつでもできるし、ここで逃げたら負けたみたいで悔しくない?」と、一生懸命励ましてくれました。
友達と別れた後、どうしても家に帰ることができず、娘と公園に向かいました。冬の寒い中ベンチに座り遊んでいる娘の姿をみると、突然涙が溢れ止まらなくなりました。
どうしていいかわからず、夫に連絡してすぐに公園にきてもらいました。しかしその時の私は既に限界に達しており、近所の小さな公園で、大きな声で「日本に帰りたい」と泣き叫んでしまいました。娘がそばにいたにもかかわらず、周りが見えなくなるほど、冷静さを失っていたのです。
今までの自分だったら考えられないことでしたが、このままでは事態はもっと悪化すると判断し、夫が背中を押してくれたこともあって、翌日の便で日本に帰国することに決めました。
そう、自分で決めたイタリア生活から逃げ出すことにしたのです。
逃げ出したことで見つけた再生のヒント
日本に帰ることで、心が徐々に癒えていくのを感じました。イタリアでの苦しい状況や問題点から離れることで、ストレスが軽減され、自分自身を見つめ直す時間を持つことができたのです。
自分に何が欠けていたのか、生活をどう改善すればいいのかが少しづつ見えてきました。
過去の日本での生活を振り返ると、思い出を美化しすぎていたことにも気づきました。日本にも良い部分と悪い部分があり、イタリアの生活にも良い部分がたくさんあったのに、それを見落としていたのです。
イタリアの国民性や文化を尊敬し、受け入れることができていなかった自分に反省しました。逃げることで最も大きな気づきをえたのは、自分の弱さや不足に気づき、それを受け入れて補えばいいのだとわかったことです。
また、私の最大の欠点は、周りにどう見られているかを気にし過ぎていたということでした。周りの評価よりもまずは自分がどうしたいか、それが重要なのだと気づかされたのです。
この経験を通じて、再び挑戦するための新たなエネルギーを見つけることができました。逃げることが必ずしも悪いことではないと実感しました。むしろ、時には逃げることが自分を守り、再生するために必要な選択であると理解しました。
だからこそ、どうしても辛い時は、自分を許し、逃げる勇気を持つことが大切だと伝えたいのです。
新たな自分への一歩
逃げることは、弱さではなく、自分を守るための大切な選択です。私たちはしばしば、周囲の期待や評価に縛られ、自分を見失いがちです。
しかし、自分がどうしたいのか、自分の心の声に耳を傾けることが何よりも重要です。逃げることで得られた時間は、自己成長のための重要な時間です。
だから、どうしても辛い時は、自分を許し、逃げる勇気を持ってください。逃げた先には、新たな自分との出会いや、今まで見えなかった世界が広がっていることを忘れないでください。
自分の弱さや不足を受け入れることで、人はさらに強くなれます。周りの評価に囚われることなく、自分の道を選び、自分の心の声に従ってください。辛い時に自分を大切にすることで、未来にはきっと新しい希望と可能性が広がります。
逃げることを恐れず、自分を信じて行動してください。あなた自身の幸せと成長のために、時には勇気を持って逃げることも必要です。新たな自分を見つけ、未来への一歩踏み出しましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。